地代が安いと借地権は高い!? 借地権の価格の不思議

借地権とは、『借地借家法』に基づく建物の所有を目的とする地上権および賃借権です。つまり、土地を借りて使用する権利のことをいいます。

この「土地を借りている権利」である借地権は、他の人に渡したり、売ったり買ったりすることができます。

「ただ”借りている”だけなのに、なんでお金になるんだ!」と驚く方もいるでしょう。
なぜ、借地権は売買できるのでしょうか?

借地権は強力な権利

借地法は大正10年(1921年)に制定され、その後何度かの借地法の改正が行われたあと、平成4年(1992年)に『新法』が制定されました。

『新法』が制定される前に結んだ借地契約は、『新法』が適用されるようになるわけではなく、それ以前の『旧法』が適用され続け、『新法』制定後に結んだ契約のみ『新法』が適用されます。

そのため、『旧法の借地権』と『新法の借地権』が併存するようになっています。
現在、借地権の取引のほとんどは『旧法の借地権』です。

この『旧法の借地権』は、土地を借りる借主を保護するという側面が強く、契約期間は30年以上(建物の種類によっては20年以上)に設定する必要があり、契約期間が終了しても、基本的には更新しなければならないとされています。
つまり、いったん土地を貸すとほとんど返ってこないことになります。

借地権を持っていれば、土地を借りるための地代を払う必要がありますが、あたかも土地を持っているように自由に使用することができるのです。

借地権と所有権の違い

もちろん土地の所有権に比べて、賃借権は不便な点がいろいろあります。

① 地代を払わなければいけない
② 契約期間が終了したら更新しなければならない
③ 更新料や条件変更承諾料を支払う場合がある
④ 賃借権を他の人に渡す(売る)場合、地主に承諾が必要(承諾料もかかる)

賃借権の価格は、これらの不便な点の分だけ土地の所有権よりも価値が下がります。

したがって、土地の所有権である更地価格が100だとすると、借地権の価格は50から70程度になるのが一般的です。

では、この借地権の価格はどうやって決まるのでしょうか?

借地権割合とは

借地権の価格の決め方(評価方法)はいくつかあります。
一つは『借地権割合』を使う方法です。

借地権割合とは相続税や贈与税を徴収するために国が決めた割合のことです。
地域や場所によってこの割合は決まっており、更地の価格にこの借地権割合を掛けることで借地権の価格を求めることができます。

ただし、この借地権割合は国が税金の徴収のために設定した割合なので、あくまで目安です。実際の取引でこの借地権割合だけで金額を決めることは少ないと思います。

地代が安いと借地権は高くなる!?

もう一つの方法は、土地を借りる賃料である地代から借地権の価値を決める方法です。

不動産鑑定の世界では『賃料差額還元法』と言います。

簡単に言うと、この方法は「地代が安いほど借主は得をしているので、その分借地権の価値は高いはずだ」という考え方です。つまり、地代が安いほど借地権は高くなります。

借地権は、地主が借主から買い戻すことも多いので、
「土地を安く貸してあげているのに、なぜ借地権は高く買わなければならないのか!」
と納得できない地主も多くいます。

もう少し説明すると、もともと旧法で結んだ借地契約は、1970年代や80年代、それ以上昔に契約した場合も多く、当時の土地の価格も今よりはずっと低かったので、地代も低く設定していました。そのあと、土地の価格が上昇し、現在新たに土地を借りる契約をしたときの地代に比べると、昔に設定した地代はずっと安いという場合が多く見られるようになりました。
今現在設定されるであろう地代と、昔に設定した実際の地代の差額が大きいほど、借主は得しています。

例えば、今なら月額10万円で借りる場所を、実際は4万円で借りていたら、毎月6万円安く払っていることになり年額72万円得していることになります。
この安く借りて得をしている分を考慮して求める方法が『賃料差額還元法』です。

ただし、『借地権割合』と同じように『賃料差額還元法』だけで借地権の価格は決まるわけではありません。不動産鑑定では、これら以外にも複数の方法で試算して総合的な判断から借地権の価格を評価しています。

さいごに

借地権の価格は、”買いたい人”と”売りたい人”の間で決めるもので、いくらにしなければならないという決まりはありません。しかし、借地権は普通の土地のように市場に多く出回っていないので、なかなか適正な価格を判断することは難しいと思います。

実際に売買するときには、借地権に詳しい専門家に一度相談することをおすすめします。

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