なぜ借地人と地主はもめるのか?

土地を借りる人を「借地人」または「借地権者」、土地を貸す人を「地主」と言います。

借地人と地主の間には、様々な問題が発生します。
例えば、「更新料が高い、そもそも払う必要があるのか?」「地代を上げたいけど、応じてくれない」「借地権を買い戻したいが、提示してきた金額が高すぎる」などなど...

このような問題は借地人と地主で話し合いをして解決しますが、結論が出ない場合は裁判所で調停を行い、それでも決まらないと最終的に裁判になります。

土地の貸し借りで生じる問題は少なくありません。
なぜ借地人と地主はもめるのでしょうか?

地代や更新料でもめる

当たり前ですが、土地を借りる側と貸す側では、立場や考え方が違います。

借地人の考え

借地人にとって、借りている土地は生活の基盤であり、無くてはならないものです。今の土地から簡単に移り変えることは出来ません。

さらに、地代は毎月支払う支出なので、値上がりされると困ります。
更新料は数十万円から数百万円程度と金額が大きいので、地主に提示された金額に驚くこともあるでしょう。

地主から、
「更新料を払ってもらいたい」「地代を上げたい」と言われると、
「地主という強い立場を使って、自分たちに無理難題を言ってきた」
「お金のことばかり言ってくるひどい地主だ」

と借地人は思います。

地主の考え

一方、地主にとって、貸している土地は自分の財産です。
その財産を貸しているのだから、それに見合う対価が欲しいと考えます。

しかし、対価である「地代」の水準は一般的に低く設定されています。

住宅地の地代の利回りは、ほとんどが1%台です。
例えば3,000万円の土地の地代を考えると、利回りが1.0%なら年額30万円(月額25,000円)、利回りが1.5%なら年額45万円(月額37,500円)になります。
3,000万円程度の2LDKのマンションを賃貸したら最低でも月額100,000円程度はするはずです。場所によっては月額150,000円前後するでしょう。

その結果、「もともと低いのだから、ちょっとくらい地代を上げたい」
「地代が低いのだから、更新料で取り戻した」

と地主は考えます。

地代水準が低いので、地主は「地代を上げたい」「更新料を取りたい」と思っている。

借地権でもめる

借地人と地主で意見が異なる大きな問題が「借地権」の価値についてです。

先に書いた通り、地主にとって、貸している土地は自分の財産です。
財産を返してもらうのに、「自分が持っている借地権を買って欲しい」と借地人に要求されるのが納得できないのです。

なぜ借地権に価値があり、土地を取り戻すために地主は借地権を買わなくてはいけないのでしょうか?

借地権とは、土地を借りる権利のことです。この借地権は売買の対象になります。地主が買い取るだけでなく、第三者にも売ることができます。

平成4年の「借地借家法(新法)」が制定されるまでに行った土地の賃貸借は、いわゆる「旧法の借地権」と呼ばれます。

旧法の借地権は、借地人の立場が非常に強くなっています。
例えば、借地人が「契約をやめる」と言わない限り、この賃貸借契約は続きます。「地代を払わない」といった余程のことが無い限り、地主側から契約をやめることは出来ません。
このように、借地人は地代は払う必要があるものの、実質的な土地の所有者(のようなもの)になり、地主は貸している土地に対して何もできなくなります。

さらに、地代が低く設定されているため、借地人は賃貸借契約を続けた方が得です。
不動産鑑定理論では、「地代が安いほど借地人は得をしている=借地権の価値が高い」と考えられています。
この考え方は地主にとっては納得できません。
「善意で地代を安くしてあげているのに、借地権を高く買え とは、恩を仇で返すのか!」となります。

そもそも地主は「借地権」に価値があることに納得できない。

当事者が変わるからもめる

土地の貸し借りは、借地人と地主の信頼関係が重要です。
そもそも、土地の賃貸借を開始したきっかけは、土地が無く困っている人を助けるつもりで地主が行った契約も多いはずです。

借地人と地主は知り合いだった場合もあるでしょう。契約をした当事者同士はお互いをよく知っており、信頼関係が成り立っていたかもしれません。

しかし、土地の賃貸借は契約期間が30年、更新をすると、50~60年程度の時間が経過しています。その間に、契約した当事者はいなくなり、権利が子供に引き継がれていることも現在では多くなっいます。

そうなると、権利を引き継いだ新しい借地人と地主はそれぞれお互いがどんな人なのかわからず、信頼関係も築きにくくります。

ほとんど会ったことがない地主から「地代を上げたい」と突然言われたら、
借地人は警戒し、地主に対して不信感を抱いてしまうかもしれません。

契約した当事者が代わるため、信頼関係が築きにくい。

直接会って話し合うことが大事


借地人と地主の間には微妙な問題が多くあります。
「お金」に関することなので、お互いシビアにならざるを得ません。

問題が発生したら、まずは借地人と地主が直接会って話をすることが重要です。
借地人と地主が話合いで解決する気があれば、お互いの妥協点を探ることになります。自分の主張をするとともに、相手の主張もしっかりと聞く必要があります。

問題解決の糸口を見つけるために、専門家に相談することも一つの手段です。