なぜ人口は減少しても地価は上昇するのか?

2018年3月に地価公示が発表され、住宅地の土地の価格(地価)の変動率は+0.3%の上昇となりました。ちなみに、2017年も+0.022%で、2年連続で上昇が進んでいます。つまり、ここ最近は住宅地の地価が上昇傾向にあるということです。

一方、総務省の発表によると、2018年1月時点の日本の総人口は1億2659万人、2017年1月時点から約23万人減少しています。総人口のピークは、2008年の1億2808万人で、それ以来減少が続いています。なお、15歳から64歳に限っては、2017年から1年間で約57万8千人減少しました。

ここで疑問が出ます。

人口が減少しているのに、なぜ地価は上がっているのでしょうか?

上昇している場所と下落している場所がある

冒頭に書いた+0.3%の変動率は全国の地価の平均値です。
あたりまえのことですが、平均値なので、地価が上昇している場所もあれば下落している場所もあります。

2018年の住宅地で前年から最も上昇した土地は、北海道倶知安(くっちゃん)町南三条東(地価は前年比+33.3%)です。スキーをしにくる外国人観光客が増加したことで土地の需要が増加したことが原因です。

上昇した地点は、主に北海道や沖縄県が中心で、観光需要が原因で地価が上昇しています。

一方、最も下落した土地は、神奈川県三浦市三崎町(地価は前年比-8.1%)です。
三浦市は平成20年の人口が49,053人であるのに対し、平成30年6月の人口は43,386人に対し、と約12%減っています。この人口減少が地価下落の原因です。

残念なことに、下落した住宅地のランキングでは、TOP10の中に横須賀市と三浦市の地点が5つ入っています。
横須賀市、三浦市は三浦半島にあり、人の流入が難しく、東京からの通勤時間が長いことがネックとなり人口減少が続いています。

全国の地価は、横ばいの地点が多く、上昇と下落している地点も含めた平均値を示しているので、全体で見ると+0.3%と上昇しているのです。
そして、下落している地点では人口減少の影響が大きく反映しています。

人口は減っているが、世帯数は増えている

もう一つ着目したい点は世帯数です。

総務省が発表している統計データによると、平成27年の世帯数は5340万3千世帯となり、平成22年から145万3千世帯の増加、率にすると2.8%増となっています。

つまり、人口は減少していても、住宅の需要”世帯”はむしろ増加していることになります。
「世帯数」を基準にすると、地価が下落せず、むしろ上昇していることも納得できるのではないでしょうか?

ちなみに、1世帯当たり人員は、平成22年の2.46人から2.38人に減少しています。最近では、結婚しなくても自立できる女性が増えてきたこともあり、世帯の人員は統計を取り始めた昭和45年から減少し続けています。

人口減少は続く

地価の上昇や下落の要因はさまざまで、ここに書いたのはその一つの要因に過ぎません。

地価がこのあと、どうなっていくか、いろいろな点を検討する必要があります。

一方で、人口の減少は今後数十年は確実に進む現象です。
人口減少による地価への影響度合がどうなるか、注視していく必要があります。